今日賛主義!

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盲目のピアニストの秘めた願い。「インビジブル」

邦題:インビジブル 暗殺の旋律を弾く女
原題:IN DARKNESS
公開年:2018年
製作国:イギリス、アメリ
監督:アンソニー・バーン
出演:ナタリー・ドーマー、エド・スクライン、エミリー・ラタコウスキーetc
公式サイト:http://www.at-e.co.jp/wwc/2018/

 

盲目のピアニスト・ソフィアを主人公とするサスペンススリラー。
「2度観たくなる!」という触れ込みなので、要はミスリードがある映画だと自白しているのですが。
それでも「盲目」というテーマを活かした構成が楽しめました。

 

ある晩、ソフィアの真上の部屋に住むベロニクが転落死。
その際に言い争う声を聞いていたが、彼女は警察に言わない。
実はベロニクは黒社会の大物の娘であり、面倒ごとに巻き込まれたくないからか。
そして言い争っていた男に目撃者と判断され、命を狙われる。
知らぬうちにソフィアはあるUSBを託されており、黒社会の内紛に巻き込まれていく…

 

という構図がひっくり返っていきます。
徐々に違和感を散りばめつつ、それらが束ねられていく。
ソフィアとベロニクの付き合いは浅いのか? 死を悼むほどに深いのか?
その父親の開催するパーティで演奏する理由は?
そして、、、本当に視えていないのか?
実は当初から、ソフィアのある計画が進められていた。
中盤からはスパイもののような緊張感のある展開でした。

 

二重構造のような構成も巧妙だし、細部も丁寧な作りです。
冒頭、楽団の指揮者がソフィアに「君なら他の人が気づかない音に気づける」と言い、「はて?」と思った直後にソフィアが白杖を取り出して盲目だと判明。
続けてその日常を丁寧に描写し演出してくる。
電車が事故で運休したり廊下に何か落ちていたりという不測の事態に弱いこと。
個人的に懐疑的だった音声入力が助けになること。
ある人が来たら特定の曲を演奏するよう依頼していたのは粋だなと。
本筋でなくとも、そういったダイバーシティを描くドラマがあっても良いと思いましたね。

 

積み上げてズラして、当初の予想とは違うものが組み上がっていく様は観ていて楽しかったです。
ただ、最後の流れはちょっと飲み込みにくかったかな。
ソフィアの目的に沿っているのかいないのか…

 

あと何より、主演のナタリー・ドーマーが美しかったですね。
何も視えていないはずの、しかし全ての向こう側を視ているような瞳。
盲目の役で目の前で何があっても反応しない、焦点を合わせないというのは難しかったろう。
そういう人間を演じ続けることが出来るのだなーと感心しました、ええ。