今日賛主義!

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「十年」後の世界ってこんなもの?

邦題:十年 Ten Years In Japan
公開年:2018年
製作国:日本
監督:是枝裕和(総合監修)
主演:杉咲花國村隼、太賀、川口覚池脇千鶴etc
公式サイト:http://tenyearsjapan.com/

 

十年後の未来を5人の新進気鋭の監督が撮る短編映画集。
同様の作品は香港で始まり、台湾・タイ・日本に広がっているそうです。
キャッチフレーズは「今、日本の未来を世界に発信する意味」。
新鮮なビジョンとパワーを感じに行ってみました。
……が、期待はずれ。
一言でいうと、日本の未来はよくあるただのディストピアのようです。

 

1.PLAN75
安楽死が公務員によって推進されている未来。
楽観的に死を望む人もいれば、行き場がなく受け入れる人もいる。
そしてそんな公務員である主人公の義母も、徘徊老人となり安楽死を希望する。
その狭間で揺れる家族を描いた作品。

 

2.いたずら同盟
AIによって管理される未来の学校。
カリキュラムから私生活まで指示されることに反抗する小学生3人が主人公。
AIによる個別指導にはメリットもあると思いますが、ただの監視システム扱いでした。

 

3.DATA
故人の写真だけでなくメールやSNSやといったデータも遺されている世界。
亡き母のデータを盗みみて、その過去を追いかけていく女子高生が主人公。
本人が死んでもデータは残り続ける、しかしそれは故人を正確に表すものなのか?
未来感はあまりないけれど、ミステリー仕立ての脚本は面白かった。

 

4.その空気は見えない
(おそらく)原発事故で地下世界で暮らすようになった未来。
地上に憧れる2人の少女が主人公、親の愛という名の妨害を振り切って最後に外の世界で見たものは…
我々は彼女たちに何を残せるのか。
とはいえ、テーマも流れもベタすぎかな。

 

5.美しい国
徴兵制の始まった未来。
戦場ではなく、徴兵制を広告する人間の視点で間接的に描いているのが新鮮。
でもそれだけ。

 

全体的に、よく言えば問題提起ではあります。
しかし問題提起であれば是非を問うようなものであってほしい。
その点で、1.は安楽死にまつわる苦悩を描いていて心に響きました。
逆に、それ以外は「非」側のみ。
「こんな未来で良いんですか?(良くないでしょう)」という主張。
まったく未来志向ではない。

 

そもそも、全作品とも10年先の話に見えません。
目先の問題へのアンサーであって、よくて5年先といったところでしょうか。
何せ10年前といえばスマホもないわけです。
さらに大きく社会は変わっていることでしょう。
移民を大量に受け入れた未来、仮想現実で全て事足りる未来、大国の属国のようになった未来などなど。
フィクション故の、もっと飛躍したケーススタディを見せてほしかった。