アナ・ウィンターが織りあげるファッションの歴史と芸術性。「メットガラ」
邦題:メットガラ ドレスをまとった美術館
原題:THE FIRST MONDAY IN MAY
製作年:2016年
製作国:アメリカ
監督:アンドリュー・ロッシ
~あらすじ~
2015年5月2日、NYメトロポリタン美術館(MET)。アート・ファンとファッショニスタが注目する伝説のイベント《メットガラ》が華やかに幕を開けた。大階段にはレッドカーペットが敷き詰められ、ポップスターのリアーナやレディ・ガガ、アカデミー賞の常連、ジョージ・クルーニーやアン・ハサウェイ、フランスを代表するデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエなど、世界中から招待されたセレブがフラッシュの光を浴びてそぞろ歩く舞台に早変わり。豪華セレブリティと一流メゾンの鮮やかなオートクチュールが競い合う狂乱の一夜を主催したのは“プラダを着た悪魔”こと、アナ・ウィンター。一人あたり25,000ドル(約285万円)と高額な席料にもかかわらず600席が瞬時に満席になるのは、彼女の人脈と情熱の賜物だ。(この収益金はメトロポリタン美術館服飾部門の1年間の活動資金に充てられる)
世界最高峰の美術館の粋を集めた豪華絢爛なコレクションに、ため息がこぼれる至福の91分間!
(公式サイトより)
スーパーセレブの集まった、さぞゴージャス&スタイリッシュなイベント記録なんだろうなぁと思っていたら、さにあらず。
歴史的な衣装を集めた展覧会の舞台裏を見つめたドキュメンタリーでした。
ファッション業界の最高峰、いわゆるモードとかハイファッションとか言われる世界。
ファッションを歴史ある繋がりとして、その他の美術品として展示し、インスタレーションで演出する。
さらに各界のセレブを集めて開幕パーティを開き、耳目を集める。
アート、ファッション、カルチャー、ポップの融け合った壮大なイベントと言えます。
一方で、そのような派手なイベントを歴史ある美術館で実施するには様々なしがらみがあるようで。
意外にも、と言うと失礼かもしれないが、一般企業のような会議や調整が繰り返されます。
しかも今回は中国をテーマにしているため、政治的な配慮も必要。
中国文化の展覧会ではなく、あくまで中国モチーフの衣装デザインの展覧会なのですが、ステレオタイプな古い中国を表現していると捉えられる可能性もあると。
このくだりは結構重みがあります。
とは言え、伝統的な意匠やチャイナドレス、陶磁器などをイメージして西洋のドレスに昇華されたデザインは美しい。
その魅力を伝えるために奮戦する姿も惹かれるものがあります。
それにしても、このイベントを統括するアナ・ウィンター。
強烈なビジョンと美意識を持った人だと感じました。
まさに「プラダを着た悪魔」と同様、強引とも言える鶴の一声で物事が決まります。
(常にスタバのデカいコーヒー片手なのも同様)
展示物からインスタレーション、セレブの席次まで、自らのイメージを主張していく。
ただ、そのセンスは確かなのでしょう。
そして、同じくハイセンスな人を集めるカリスマ性も。
劇中、「伝説的」「巨大な事業体」と評されていましたが、その通りのパワーを感じました。
当時70歳手前なのですが、服装もお洒落なら所作も美しい。
ファッションはアートなのか?
それについては、業界の中でも様々な意見があるようです
個人的には、この映画に出てくるような個性的かつ洗練されたデザインは、共有されるべき美術品だと思います。
メットガラ、行ってみたい。
ちなみに2017年の展覧会は「川久保玲/コムデギャルソン展」だそうです。
日本人デザイナーについて、どんな展示が企画されているのでしょうね。
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