今日賛主義!

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江戸と浮世絵の幻想風景。「百日紅」

邦題:百日紅 ~Miss HOKUSAI~
製作年:2015年
製作国:日本
監督:原恵一
主演:杏、松重豊etc
 
百日紅が咲いたね。
 わさわさと散り、もりもりと咲く、か」
 
あべのハルカス北斎展を観て、この作品を観たくなりました。
上映当時はタイミングが合わず観れなかったのです。
主人公は葛飾北斎の娘・お栄。
お栄も同じく絵師であり、絵師親子の関係がメインかと思いきや。
その妹や同居人、片思い相手といった周辺含めた暮らしぶりの話。
 
原作者は江戸風俗研究家(昔、お江戸でござる見てたなぁ)ということで、当時の生活を覗いている感じ。
(もちろん実際の生活は知らないが)
両国橋を行く人々の賑やかさ。
火事と喧嘩は江戸の華。
 
特に、お栄の妹がいるときの描写が秀逸。
目の見えない妹が感じているであろう音や空気や手触りが想像される。
観ているほうはそれと映像が相まって、高い情報量となって寄せてくる。
 
リアル志向かと思えば、ところどころ挿入されるオリエンタルファンタジー。
嵐の夜に竜が降りる。
夜更けの吉原の怪。
椿一輪の里帰り。
 
突拍子もないわけではなく、「そんなこともあるかな」と思える不思議。
民族伝承というか、生活に溶け込む伝奇というか。
浮世絵の幻想的な部分を拡げたような雰囲気です。
北斎展にあったような赤い鐘馗も上手く使われていました。
 
ただ、原作は短編連作らしく、エピソードの繋がりが良くない。
全体的な流れとしてはお栄の成長とも取れるけど、少し弱いか。
大きな山場がないので、盛り上がりに欠けると思う。
終わりが締まらないというか…
 
逆に、人の暮らしの一部と思えば。
その淡々とした流れが、「らしさ」でもあるかもしれない。
各エピソードや台詞回しはそれぞれの風情があり、江戸の雰囲気・生活・粋を味わえる。
長編映画と思うとツラいところがあるが、主人公たちの暮らしを描いた短編集だと思うと面白い。
原作は素直に楽しめそうなので読んでみたいですね。
 
北斎展@あべのハルカス美術館は2017年11月19日まで。