邦題:HELLO WORLD
公開年:2019年
製作国:日本
監督:伊藤智彦
公式サイト:https://hello-world-movie.com/
これが「君の名は。」以後の日本のアニメ映画というやつか…
青春で恋愛でちょっとSFでちょっとファンタジー、全体的にどこかで観たような要素の詰め合わせ。
概略すると、「SAO(アリシゼーション編)」と「サマーウォーズ」をベースに「君の名は。」仕立てにした内容。
監督が関わってきた作品のいいとこ取りした、まさに売れ線!という感じの映画です。
問題は、そのターゲット層に自分が含まれていないことですね。
高校生・堅書直実の前に10年後の未来から来た自分・ナオミが現れる。
3ヶ月後、クラスメイトの一行瑠璃と恋人同士になった直後に、彼女が致命的な事故に遭うという。
その未来を変えるため、直実とナオミは行動を始める。
開始時点では全く意識しあっていない直実と瑠璃が徐々に惹かれあっていくのが微笑ましい。
そしてその日、世界は急転する…
舞台となる2027年の京都は、街の全てをデータベースに記録し続ける「クロニクル京都」という計画が進行しています。
新文化庁のシンポジウムで似たようなアイデアがあったような。あれは歴史を遡るんだったか。
面白い計画だと思うのですが、背景設定であってあまり活きていません。
利用法としてはGoogleマップの亜流程度、もっと「クロニクル京都」の実益を享受している世界を描写してくれれば夢があったのに、と思う。
というように、タイムリープと仮想現実が軸になっているのは新しいですね。
が、お話としては中盤でナオミの真の目的が明かされるあたりがピークでした。
恋愛に到るまでの描写は丁寧だけど、恋心を意識してターニングポイントを迎えてからは、いわゆるセカイ系展開の消化試合。
そのあたりが特に「君の名は。」を思い出させます。
他にも、映像は綺麗だけど新鮮味はないところとか、いい場面で急に歌を流して集中を削ぐところとかも。
大体が、いつかどこかで観たことある感じなんですよね。
「ラスト1秒でひっくり返る」という触れ込みでしたが、伏線が足りてなくて綺麗にひっくり返ってない印象。
私の読解力不足ですかね?
しかし、少なくともナオミがそうなった起点の手がかりはないはず。
やりたいことはわかるし、それで物語が一回り大きなものになるのですが、それならそうともっと伏線を仕込んでおいてほしいもの。
特に後半はほぼアクションさせたいだけの脚本だし。
いまさら板野サーカスやってる場合か。(好きだけど乱発されると飽きる)
それに、全体を一回り大きくしようとすると相対的に直実と瑠璃の2027年が一回り小さくなってしまう。
2人がやっと至った新世界が、あの2037年の中でだけの話に見えてしまうのが残念です。
「君の名は。」「サマーウォーズ」「SAO」が好きで、それっぽい作品が観たい方にはオススメできます。
個人的には、ただの焼き直しで「この作品ならでは」の魅力はなかったかな。
舞台設定は良いので、もっと心情描写を深めて、最後のどんでん返しが綺麗に決まってくれれば良かったのですが。
残念。
こういう幕の内弁当みたいな映画ばかりになるのかと思うと、もっと残念。