邦題:ハニーランド 永遠の谷
原題:HONEY LAND
公開年:2019年
製作国:北マケドニア
監督:リューボ・ステファノフ、タマラ・コテフスカ
出演:ハティツェ・ムラトバetc
公式サイト:http://honeyland.onlyhearts.co.jp/
ヨーロッパ最後の自然養蜂家に3年間密着したドキュメンタリー。
と聞くとほのぼのロハスな印象を受けますが、さにあらず。
冒頭数分で、広大な山岳地帯を採集してまわる厳しいライフスタイルに飲まれます。
北マケドニアの山岳村に老いた母親と暮らす主人公・ハティツェ。
「半分は自分に、半分はハチに」
自然との調和を重んじる彼女を中心とした物語に、環境保護ではなく自然と暮らすことを考えさせられました。
そう、ドキュメンタリーなのに物語があるのです。
インタビューもないのに人間模様がきっちり描写され、話のスジも良いしカメラワークも良い。
冒頭の静かな生活の中に、エンジン音が響いて隣人が引っ越してくるところから映画としての物語が始まる。
ハティツェの生活、隣人の生活、それらの交流と破綻。
引っ越し当初は、その牛飼いの隣人と仲を深めていくのですが。
子供の生活を思って、ハティツェを真似て養蜂を始める。
まぁ当然のように欲が出てきますよね。
仲介業者の思惑もあって大きく稼ぐために根こそぎ収穫してしまう。
自分たちの巣の蜜を奪われたハチは、近くの巣の蜜を襲い、殺し合い。
「半分はハチに」の調和が崩れ、連鎖していく。
当然、ハティツェの生活も脅かされることに。
その隣人は物語上は悪役に映るけれど、咎めることはできない。
現代人の行動そのものだから。
生きるためには自然環境より市場経済のほうが重要。
自然の中ではなく経済システムの中を生きているような、現代社会の縮図。
しかしだからといって、自然回帰が良いかというと?
老いた母親のように弱った人は、都市生活のほうが生きやすいだろう。
後継ぎのいないハティツェも、いつまでこの生活を続けられるのだろう。
自然とともに暮らすということは、自然に淘汰されるということ。
もちろん調和があるのがベストなんですが。
現代社会と自然環境のちょうどいい「サスティナブル」なバランスはどこにあるのか。。。
しみじみと考えてしまいますね。
映画としても、情報の寄せ集めではなく一貫したまとまりのある構成は素晴らしい完成度だと思います。