「ある人質」の追体験
邦題:ある人質 生還までの398日
原題:SER DU MANEN, DANIEL
公開年:2019年
監督:ニール・アルデン・オブレヴ、アナス・W・ベアデルセン
出演:エスベン・スメド、トビー・ケベルetc.
公式サイト:https://398-movie.jp/
ISの人質になったデンマーク人青年とその家族の実話に基づいた物語。
デンマークはアメリカや日本と同様に、テロリストと交渉しない・身代金は払わないという政府方針。
身代金で調達した兵器でさらに多くの人が死ぬと考えるとやむを得ないけれど、目の前の一人を救えないというのも。。。
世界の裏側などではなく、これもまた世界の事実。
どこにでもいるような若者(ただし家族の中でもイケメン)、ダニエル・リュー。
体操選手としてのキャリアを怪我で失い、カメラ好きが高じて戦地の取材に向かう。
しかし難癖のような理由で連行され、スパイ疑惑をかけられ尋問と投獄。
最終的に人質ビジネスの種とされてしまう。
拷問はもちろんのこと、ロバの真似をさせられ面白がられたり人の尊厳を失うような環境。
生きることで精一杯、いつ殺されるかわからない。
いや死んだほうがマシと自殺を図るほど。
ジワジワと諦観に追い詰められていく描写は痛みます。
そして、見たことのあるようなオレンジの上下を着て、見たことのあるような窪みの中で「開放」される人質も。
そういった人質案件に対応する交渉人がいるらしい。
考えてみれば、体制側としても身代金を要求・入手するチャンネルが必要ですしね。
間を綱渡りする人間が必要なんでしょう。
彼を介して、一般市民である家族が対応し資金調達に奔走する。
しかも政府方針のために、調達理由をおおっぴらにできない。
さらには素人だけに、交渉がうまくいかず身代金を吊り上げられ、、、
いざ自分の家族がこうなったら。
戦火に飛び込んで行くような親族はいないけれど、日本では自己責任論でしょうね。
物見遊山と混同されてしまう。
まぁ視聴率稼ぎにご執心のマスコミを日頃見ていると、ジャーナリズムの価値がね…
同じく人質となったアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー。
「誰かが現実を伝えなければ」「あいつらの憎悪に負けない」
その気概は必要だと思う。
しかしアメリカ人である彼も、公式に身代金が払われることはない。
それを自覚してなお、周りを明るく元気づけようと振る舞う姿が眩しい。
もちろん人質に取るほうが悪い。
そしてそういう相手には近づかいほうが良い。
では都合の悪いものには蓋をして見ぬふりを決め込むのか?
映画だけれど、改めて事実と向き合うきっかけに。
しかしさんざんイジメておいて、いざ殺すとなったら震えてるのは、、、
人間、そんなものかな。