邦題:マックイーン モードの反逆児
原題:McQueen
公開年:2018年
製作国:イギリス
監督:ピーター・エテッドギー、イアン・ボノート
出演:リー・アレキサンダー・マックイーン、イザベラ・ブロウ、トム・フォードetc
公式サイト:http://mcqueen-movie.jp/
ファッションデザイナー、リー・アレキサンダー・マックイーン。
23歳で本人の名を冠する「アレキサンダー・マックイーン」を立ち上げ、そして27歳から「ジバンシィ」のデザイナーを務める。
華々しい業界で高い名声を得、34歳で英国勲章を授与。
しかし2010年、40歳で自ら命を絶つ。
彼が駆け抜けた人生を、記録映像とインタビューで描き出した映画です。
正直なところ、本人を見た第一印象は「小太りのオタクっぽい人」でした。
服装に凝っている訳でもなく、ごく普通のシャツにジーンズ。今でいうユニクロのような。
しかし、生み出されるファッションは突き抜けている。
サランラップやタイヤなんてものまで活用して仕上がった、見たことのないデザインに感嘆します。
何度か挿入されるコレクションショーの記録映像は、さらに圧巻。
コレクションのテーマは独特かつ奇抜。「暴漢に襲われた後」だとか「ジャングル」だとか。
流石に賛否両論だったようですね。
「何故そのテーマ?」と不思議に思いますが、それを見事に衣服で表現してくる。
テーマがテーマだけに悪夢のようでもあり、よくできた悪夢を横から覗きみるようなドキドキとワクワク。
ファッションは自由。無限の表現力に惹きつけられました。
ステージ演出も凝っていて、ただランウェイを歩くだけでなくまさにショー。
一番印象に残っているのは、ロボットアームが踊ってモデルの白い衣装にスプレーで彩色していくというもの。
ランウェイで完成品を披露するのではなく、完成させていくというのが新鮮です。
他にも、事故で火事が起きても演出のフリして継続したというのは鬼気迫るというかやりすぎというか。
いずれにしても全霊をかけて表現している。
情熱。才能。発想。全ての合わせ技。
かといって商業的な成功も見失っていない。
トム・フォードが「詩人と商人の間」と称えていたのも納得です。
ただ、暗いテーマを選ぶだけあってやはり闇を抱えていたようで。
トラウマ、ストレス、プレッシャー、そしてドラッグ。
そんななか、各ブランドを合わせて年14回もコレクションを開催。
心身を削られながら流星のごとく駆け抜け、そして燃え尽きた。
素晴らしい作品を残しても、笑って終われないのは哀しいものです。
しかしそんな葛藤があったからこそ、その作品が生まれた…とすると複雑な気分ですね。
やはりというべきか、観に来ているお客さんがオシャレ。
真っ赤なセットアップ、タイトで程よく装飾的なレザージャケット、軽やかな色合いのワンピース等々。
せっかくなので、カジュアルラインのMcQのジャケット(古着)で行きました。
おこがましくも、素晴らしい作品(の系譜)を楽しむことが手向けかなと。
服の力を描いた映画たち。