我が道を極める姿は美しい「フリーソロ」
邦題：フリーソロ
原題：FREE SOLO
公開年：2018年
製作国：アメリカ
出演：アレックス・オノルド、トミー・ゴールドウェル、サンニ・マッカンドレスetc
公式サイト：http://freesolo-jp.com/
単独かつ命綱なしで岩壁をクライミングするというフリーソロ。
その有名なプレーヤーであるアレックス・オノルドが、前人未到のエル・キャピタンに挑んだドキュメンタリーです。
雄大な景色はもちろんのこと、自らの道を極めていく姿がとにかく美しい。
2019年度アカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞作。
手がかり足がかりにするのは、指先がかかるかどうかのほんの少しの出っ張り。
アップで映されてもなぜ体を預けられるのかわからないレベル。
そして、命綱を預かる仲間もいない。
命綱があれば、少し離れた石を勢いをつけて掴みにいくような大胆な動きもできる。
しかし、フリーソロでは失敗は即、命取り。
劇中にもありますが、人知れず亡くなって遺体が発見されたチャレンジャーも多い。
ならばアレックスは命知らずの無鉄砲かというと、そうでもない。
命がけの挑戦をせずにはいられず、それ以外に執着しない変人ではあります。
講演や執筆で収入を得て、キャンピングカーのようなバンで暮らしながらクライミングスポットを転々とする。
とはいえ、いつもフリーソロで登っているわけではなく、ロープを使って友人と共に登る。
そこは普通のクライマー。
ここぞというスポットでフリーソロのために何度も挑み、ルートを確認する。
どこに手をかけどう進むか綿密に計画し、着実に成功への道筋を構築していく。
それでも、撮影となるとイメージ通りにいかない。
人が多くて集中できない。
落下した記憶がフラッシュバックする。
しかし彼は「完璧に準備できていたら動じないはず」と言ってさらに仕上げに進めていく。
そんなストイックな姿に惹き込まれます。
それでも重たい空気にならないのは、恋人・サンニの存在が大きいですね。
アレックスとは対照的な明るさが全編に彩りを与えていました。
挑戦する本人もそうですが、撮影する側も大変な挑戦だったようです。
クライミング経験者が集まって宙吊り、定点カメラやドローンも使う。
フリーソロの邪魔をせず、しかし絵になる映像を撮らなければならない。
もし撮影のために失敗したら、アレックスの死に様を見届けてしまうという緊張感。
アレックスだけでなく、この撮影を成し遂げたことまで含めて偉業だと思います。
フリーソロという特殊ではありますが、自分の道を極めていく姿が格好いい。
傍目には法外なリスクを選んでいるようですが、本人はそれに見合った達成感を得ている。
そういう孤高な精神に心がざわつく映画でした。
さて、自分はどんな道を歩もうか。
